賛否はありますが、昭和を代表するアニメが『サイボーグ009』なのです

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1960年代後半に劇場版アニメ映画とモノクロテレビ放送がなされました。この後、1970年代後半から平成最末期の現代まで、実に複数回にわたる新規の作品が新たに制作されはしたものの、作画の質はともかくメッセージ性はこの60年代の作品には及びません。

賛否両論はありますが、昭和を代表するアニメがこの『サイボーグ009』なのです。世界的な秘密結社が新兵器として人間を改造した各種のサイボーグを極秘に開発するために世界各国から無作為に一般人を誘拐して手術を施すという衝撃的な内容でした。

作者の故・石ノ森章太郎氏は原作漫画の執筆前に世界各地へ旅行されたことが契機で本作のヒントを得られたようです。石ノ森氏が尊敬されていた手塚治虫氏の代表作である『火の鳥』が実に多くの雑誌を経て発表されたのと同様に、原作も複雑な経路で世に送り出されました。

熱狂的なファンも多いのですが、その内容の特殊性からか評価が分れる作品でもあるのです。ともあれ「萬画」を標榜されていた同氏の代表作であることには変わりはありませんが、残念なことに完結することなく氏は病でこの世を去られました。

決着する形がこの目で見たかったのですが、神々との戦いを含めての壮大過ぎるスケールであるため、長期の休筆も含めてこうなったことは止むを得なかったのかのしれません。一つの作品をテーマとして複数のスピンオフ作品が展開されることは今日においては珍しいことではなくなりましたが、本作は質・量・主題のどれを取ってもまさしく「神話」と化した気がするのです。

平成の新作を含めてですが、氏のメッセージはあの時代を現実に生きた人間にしか理解できない点があると私は思うのです。60年代のあの悪夢のヴェトナム戦争はもう歴史の一部に過ぎない点がありますが、少なくともあの当時においては当事国以外でも深刻な社会問題であり、作品にもいろんな形で取り入れられているのです。

人間を特化したサイボーグ兵士を戦場で使用する。バイオテクノロジーが発達した現在でも実現はとても不可能だとは思いますが、科学のあるべき姿が歪められた暗い未来への警告として氏は筆を取られたのではないでしょうか。

現在の視点ではその描写と共に登場人物達が発するセリフにも修正を余儀なくされる点が多過ぎ、その点でも隔世の感があります。

しかしこういう手を除いても、私はやはりこういうメッセージ性の高い作品を多くの人に知ってもらいたいのです。確かに回顧主義の面はあるでしょう。

でも作品の本質は何ら変わっていないと堂々と主張できるのが本作なのです。

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